
ここはバンコクから少し車で走った場所にある緑豊かな自然に囲まれた学校。朝4時半に起床し、5時からクラスは始まる。もちろん外はまだ真っ暗。生徒たちは、鳥たちよりも少し早起きして夜が明けるのをしみじみと感じ入りながら授業を行うのだ。他の学校のように国語や文学、数学や英語も学ぶが、映画を作ったりしちゃうことができるのがここのカリキュラム。自分たちで撮影から編集まで行い、出来上がった作品はシアタールームで鑑賞するそうだ。なんて創造的なんだ。その他にも音楽やアートなどの芸術により深い関心と、時間をかけるそうだ。
先生の1人がここを案内してくれた。建物は伝統的なタイの高床式の木造建築。開放的で広々とした踊り場を囲うように仏壇があって、図書室と音楽室とアートが飾られた部屋とがそれぞれ部屋へ渡って歩けるよう囲うように並んでいる。と言ってもここでは内と外との差があるようでないのだが……。



それほど広くない土地に植物は上手く植えられ、子供たちが体を動かして遊べるようにあちこちに工夫が加えられてあって、それに周りにはいくつもの小ぶりな池がある。その池の浅瀬にたくさんのアヒルが泥の上で昼前の日光を気持ちよさそう浴びていたので、思わず池に伸びる橋を渡って近づくと、それが癪に触った様子で、アヒルは立ち上がり「グゥァグゥァ」と怒鳴りながら僕から離れていった。その橋を渡り終えると、刈り終えたばかりの美しい稲の田園風景が目の前に広がった。
そんなアヒルや鳥の声が耳に心地よく入る教室では、生徒は椅子に座りペンを持ち真剣な趣きで先生の話を聞いていた。まるで普通の生徒のように。だがその普通にうまく馴染めない生徒もなかにはいる。普通ってなんだろう。ここで仲間と授業を受け、絵を描いたり、本を読んだり、楽器を弾いて仲間と暮らすうちに、生徒は無垢な態度と姿勢でゆっくりと眺め、体験し、成長していく。撒かれた種が土の中でゆっくりと芽を出すのを待ったり、出た芽が立派に大きくなっていくように。




こういう場所にくると、人生のものごとについてゆっくりと考えられる時間が与えられたような気がした。普通じゃないほうが、自然的で人間らしくいられる気がした。